響きの旅は、毎章に決めたテーマを、僕自身が実体験するようになって来た。
それは、過去も未来も混在している時空の旅のようで、テーマを決めたから、神様にその体験をさせられるのか、それとも、未来に起きうるその体験を予知したかのようにテーマが降って来るのか、まるで分からない。
しかしながら、ひとつ確かなのは、響きは、僕自身の等身大の体験の記録である。
先住民族を撮っているようで、自分自身の内側を撮っていると言っても過言ではないだろう。
ドキュメンタリーという定義に、そもそも違和感を感じていて、それは、あくまでも制作者の「意図」が働くという前提をしっかり見つめる、その謙虚さが必要ではないだろうか。
ドキュメンタリー映画「響き 〜RHYTHM of DNA〜」を、どこかのタイミングで、ビジュアルメッセージ「響き 〜RHYTHM of DNA〜」に変えようと思う。
響き第6章ネイティヴ・ハワイアンの旅では、テーマに決めた「祈り」を、僕自身が実体験するものになった。
そして、響き第7章アイヌ民族編のテーマは、「人と神々」
その実体験は、「人は自然の一部である」という真理に辿り着くものになった。
人が自然の一部であることを、100パーセント知って、そこに生きる時、人間は神々の美しい「時」の中に置かれる。
すべての行いが、「ちょうどいいタイミング」になる。
「時」までもが味方する世界。
人は自然の一部であることに真に気づき、そう生きることが、どれほど大切であるかを、人類の先祖たちは知っていた。
それが、人と神々とが存在する、この世界のすべてであろう。
ともすれば、木の枝にぶら下がっている葉っぱの一枚一枚ですら、自分がどのような存在かを知っているが、人間だけが、この自然界で、自分が何者であるかを見失ったのではないだろうか。
「時(タイミング)」それは、答え。
「神様の計らいは、時にかなって美しい」
以下、二つほど、そのエピソードを述べる。ディレクターズ・ノートより。
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【ディレクターズ・ノート:タイミング】
現地時間 2016 4.30 7:00
※アシリ・レラさんとの出会い
響きミラクルが始動した。
昨日の朝、前の晩に帰って来てるはずのレラさんに電話を入れる。
旅のお疲れもあるだろうから、10時頃がいいかと決めてあった。
ちなみに僕が知っているのは、ご自宅の電話番号だけ。
しかし、9時を少し回ったところで、僕の直感が、今すぐに電話をかけなさいと言うのだ。
僕は如何なる時も直感に従う。
電話に出られた方が、はい、ちょっと待って下さい、とすぐにレラさんに変わった。
どうもレラさんをご紹介下さった西谷先生とも、連絡が取れてなかったようで、僕からいきなりコンタクトを取るカタチとなった。
電話の向こう側が慌しい。
「今、山菜採りに出かけるところ。あんた今すぐこっちに来られるのなら会えるわよ」
と、レラさん。
今、思うとレラさんの受け応えは、僕がこれまで出会った先住民族の長老たちと同じだった。
彼らは、「その時」をとても大切にする。
会う必要がある人は、どのような場面でも出会う。
なので、そのタイミングに敏感なのだ。
電話で、僕が何者かを説明する間を与えてくれることもなく、レラさんはこの短い言葉を残してすぐに電話を切った。
あぁ〜 先住民族タイムだ。
と、僕はすぐに察した。
あなたが間に合うなら、会う。その運命なのよ。と、レラさんは言っているのだ。
僕は急いで支度し、すぐに車を走らせた。
案の定、レラさんの家に着いたら、彼女と彼女の仲間たちは、車に乗り込んで出発しようとしたちょうどその時だった。
僕が来ること、全然待っててくれてなかった。
「・・・・・」
パワーウィンドウが、すっと降ろされ、レラさんの笑顔が僕に向けられる。
「あんたよく間に合ったわね。後ろに乗りな」
と、一言。
間に合った。これがすべての答え。
それがどういうことかを僕もよく知っている。
僕は無意識にキャメラが入っているカバンをかっ掴み、レラさんのワンボックスに乗り込んだ。
車の中には、他に数名いて、レラさんが彼らに山菜採りを教えるのだそうだ。
僕の自己紹介なんてとても簡単に、終わらされた。
それより、レラさんにとっては、僕が間に合ったことがすべてのようだ。
あとから聞いたが、すべては「タイミング」。それこそ会う必要がある、神様からの計らい、それに疑いを持たないそうだ。
「あんた、撮っていいわよ」
と、撮影許可を僕から求める前に、許して下さった。
そして、響き第7章アイヌ民族編、いきなりクランクインした。
レラさんの山菜採りの一部始終を記録した。
山に入る前の祈り、山菜を採る時の心、母親から伝わって来た知恵、命あるものを摘む時の歌。
雨が降って、山が潤い、すべての命が輝いていた。
素晴らしい取材になった。
車の中でレラさんといろいろ話して驚いたことは、僕がこれまで旅してご縁を頂いた先住民族の長老たちを彼女もよく知っていた。
レラさんも昔は世界の先住民族との交流の旅によく出かけていったようだ。
あまりにの共通点の多さに、レラさんも僕も、喜びに満ち溢れた。
すべては神様の計らい。
僕はただただ、直感に委ねて行動すればいい。
ならば、必要なものを与えられるだろう。
宿泊も、レラさんのところにホームステイが決まった。
ここ数日の寒さに、体力の消耗が激しかったので、神様の計らいに深く感謝。
結局、いつもの響きの旅と同じく、その地について一週間以内に、ホームステイが決まったのだ。
これも響きスタイルになって来た。
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【ディレクターズ・ノート:神様の計らいは完璧、過ぎる】
現地時間 2016 5.6 8:00
※結城幸司さんとの出会い
あり得ない! あり得ない!
いや、響きだから、あり得る。
妙に納得している自分。いやいや、しかし、想定外過ぎるだろう。
とにかく、魂から叫ばせてもらう。
うぉおおおおお!
昨日起きた、あまりにも鮮やかに決まった神様の計らいは、ここまで来ると芸術の域だ。
白老のアイヌ民族博物館のオープン時間、9時と同時に館内に飛び込んだ。
アイヌの歌と踊りの撮影をお願いしたく、直談判するのだ。
オープン間もないからか、誰もいない館内。
「・・・・・・」
気合い入れ過ぎかなぁと思っていたら、ネームホルダーを首かぶら下げた女性が、目の前を通り過ぎようとしていた。
よし。一期一会。
そのスタッフに、響きのすべてをぶつけよう。
僕の話を熱心に聞いて下さった彼女、少し待って下さいと言って、上の階に引っ込んだら、しばらくして、別の女性スタッフを連れて再び現れた。
彼女の名前は、学芸員の八幡さん。
よし。一期一会。
僕はまた熱心に響きのことをお伝えした。
八幡さん、最初は事務的に、あれやこれやと取材依頼文書や企画書やらの書類を求めて来た。
「僕はメディアではありません。また取材と言っても、旅をしているんです。八幡さんが求める書類は何ひとつ持っておりません。でも、アイヌ民族のことを響きで伝えたい」
と、答えになってない答えを話す僕の顔を、じっと見つめる八幡さん。
何か感ずるものがあったのか、、、分かりました、今すぐは予定が入っているので、午後2時にもう一度いらして下さい、その時に詳しくお話しを伺いしましょう、と、彼女から返って来た。
ふぅ〜、ひとまず、門前払いに会わずに済んでホッとした。
僕はそれから2時までの間、館内に展示してあるアイヌの資料を片っ端から勉強していった。
時間が近くなり、ベンチに座って、八幡さんを待っていると、ひとりの年配の方が、こんにちは、と近寄って来られた。
なんだか分からないけれど、世界の先住民族の話しで多いに盛り上がった。
共鳴する部分も多く、とにかく楽しかった。
このまま別れるのもなんなんで、最後に名刺でも交換しようとなって、自己紹介をはじめた。
その方の名前は、中村 齋(いつき)さん。
なんと、考古学者で、白老のアイヌ民族博物館の初代館長をお務めになられて、今は引退したと言う。
通りで、話しが合うわけだ。
中村さんの先住民族に注ぐ愛は深く、とても感銘した。
そして、響きで北欧のサーミ族を旅しようと考えていると話したら、中村さんは、北海道フィンランド協会の顧問をなさっていて、旅の時にまた声をかけてくれたら、いろいろと紹介するよ、とお言葉を頂戴した。
またまたも神様から遣われしびとが現れた。
そして、2時になって、いよいよの八幡さんとの話し合い。
僕はただただ、響きの情熱をお伝えした。
何かをきっかけにマニュアル通りの八幡さんが、変化しはじめた。
僕はこの時、これまで旅して来た、各先住民族の神様たちが守って下さっているのを明らかに感じた。
僕は毎日のお祈りの時に、これまで訪ねた先住民族の神様の名前をひとつずつ呼ぶ。
八幡さんの表情が急に柔らかくなり、笑顔が浮かんで来た。
そのきっかけは、台湾の原住民族、行政院のトップの王さんだ。
涙を流しながら、僕のインタビューに答えて下さったのを今でも鮮明に覚えている。
なんと、王さんを八幡さんも知っていたのだ。
それからというもの、他の先住民族の共通の知人の長老たちが出るわ、出るわで、二人は意気投合していった。
これまで旅して来た、先住民族の神様の導きを感じた。
「分かりました。ベストを尽くしましょう。今日は館長も不在ですが、出来るだけ速やかに館でミーティングを開き検討させて頂きます。2、3日、時間を下さい」
僕が二風谷に戻るスケジュールをお話しして、8〜9日に撮影出来れば助かりますとお伝えしたら、出来るだけ希望に応えたいと仰って下さった。
ミーティングの終わりに、許可が下りるまでの間、どうしようかな、と、一人言のようにぼそっと言ったら、八幡さんもぼそっと、
「札幌のピリカコタンは如何ですか?」
と、返って来た。
この時、八幡さんの何気ないこの言葉が、神様が彼女を遣わしたものであることを知る由もない。
僕の直感が、よし、そこに行こうと言っている。
車を走らせる前に、施設に電話を入れたら、今日は祝日だけど、特別営業をしていて、5時まではやっていますよと言われた。
この時の時刻は、4時。
カーナビに目的地を入れたら、1時間40分かかると出た。
今日は間に合わないなぁ、と思いつつ、とにかく、行くだけ行ってみようと車を走らせた。
ここから、僕はアイヌの神様、カムイが作り出したファンタジーの世界に飛び込むことになる。
ピリカコタンに着いたのは、閉館の5時のちょうど1分前。
「おぉ、1分前。まだ間に合うかな?」
と、僕は駆け足で館内に飛び込んだ。
この時、時間のつじつまが合わないのを僕はまだ気づいてない。
1時間40分かかる距離を、制限速度内の安全運転で、約1時間で着いたことになる。
閉館の片付けをしている受付のスタッフを見つけた。
よし。一期一会。
僕は響きの熱意を彼に一生懸命に伝えた。
「そうですか。それでしたら、分かる人が今いると思うので、ご紹介しましょう」
と、僕を連れて奥の展示室に向かった。
スタッフが、その人を僕に紹介するまでもなかった。
僕の目に飛び込んで来たのは、結城 幸司さんと、トンコリの演奏・作家の福本 昌二さん。
「え!? え!? え!?」
僕も、結城さんも、昌二さんも、ただただ驚く。
というのも、東京の中野で毎年、行われるアイヌと琉球のお祭り「チャランケ」で、ご縁を頂いていて、結城さんの講演会にも参加したり、飲みに行ったりしていた。
響きの第7章で、アイヌ民族を旅するのを、結城さんも知っていた。
今回の旅程が決まってから、メールでその旨を結城さんにお伝えしたものの、それ以降、連絡を取っていなかった。
ほんとうは、旅の前から、結城さんを取材出来ればと、心から願っていた。
しかし、響きはアジェンダ・レス。
響きで結城さんと出会う運命になっていれば、出会うだろう、と、神様にすべてを委ねたのだ。
そして、閉館のギリギリの1分前、間に合い、飛び込んだ先にいたのが、、、
結城幸司さん、福本昌二さん。
あと1分遅れていたら、僕は館内に入ることが出来ず、ピリカコタンをすぐに離れたと思う。
神様の計らいはあまりにも鮮やかで、完璧過ぎる。
レラさんの時もそうだったか、すべては「タイミング」
必要なものは、「ちょうど良い時」に、神様からやって来る。
結城さんも、この「タイミング」がすべてであると、すぐに悟った。
「タイミング」は、「答え」
この世界にこれほど確かなものはないと、100パーセント確信した瞬間でもあった。
ちょうど良いタイミングは、説明が要らない。
目的すら意味がない。
人は神様の良き計らいの「時」の中で、ただただ行うだけでいいのだ。
これも偶々であるが、7日に結城さんと昌二さんのアイヌ音楽のライブがある。
そのライブの撮影はもちろん、今日からインタビューなど、密着取材が、即決まった。
そして、なんと、ライブの前に、結城さんのトークショーがあるのだが、急遽、僕がそれに飛び入り参加することになった。
「結城 幸司と亭田 歩の対談」
が、7日に札幌で実現することになった。
すべては熊本震災のチャリティに当てられる。
一気にここまでを書いた。
すべてがまるでスローモーションのようだ。
「神様の計らいは完璧、過ぎる」
神様にすべてを委ねる旅、アジェンダ・レス、響き。
もう、何も求めない。
ただただ、感謝の一分一秒を呼吸しよう。 |