2013年5月24日。インタビュー当日、月曜日、朝6時起床。9時からのインタビューに備える。事務所まで5分だから、3時間ある。
イボンヌさんに向けて準備してきたことをベロニカさん向けに修正することも終わっているので、あとは9時を待つのみ。ゆったりした時間が過ぎる。のこりご飯でおにぎりを作り朝食。冗談を言いあったりしていたが、さすがに30分前となると緊張感がでてくる。
リラックスリラックスと思いながらも、三者三様にちょっとずつぎこちなくなっている。初舞台の幕開け直前の感じかな。15分前にキャンプを出て遅刻しないように努めるが、監督が道を間違えた。やはり、大一番が近いのだ。それでも遅刻なく事務所に到着。
ハイタッチで意識合わせをし、事務所のドアを開く。
ハロー、モーニン!!
ベロニカさんのインタビューに来ました!と眼鏡の年配女性につげると、何回か顔をみたことのある白ヒゲで恰幅のいいヘミングウェイっぽいおじいちゃんがでてきた。
「おぉ、インタビューね、聞いてる、聞いてる。君たちはどこで撮りたいんだ?」と聞くので、実は響きはユニークな撮影スタイルがあるので、外で地面に座って撮りたいんだとえーちゃんが準備したとおり流暢に告げた。
ヘミングウェイさん、躊躇なく「OK、OK、こっちなんかどうだ?」と裏庭を案内してくれる。キッチンの場所も教えてくれて、「コーヒーはココで勝手に飲んでいいぞ〜!」なんて、やけに優しい。いやいや、我々かなり厚かましいけど、そこまでフランクじゃないので、勝手にコーヒーは作らないです、ヘミングウェイさん。
庭を紹介したらヘミングウェイさんは「じゃあな、あとは好きに場所決めな!」みたいに去って行く。
玄関のロビーでとり残される三人。ベロニカさん、なかなか出てこない。10分、20分、また緊張してくる。忘れられてない? もしくは、こちらから場所決めしたら伝えるのをまってるんじゃないのか? 聞いてみよう!ということになり、永ちゃんが恐る恐る聞きに行く。
眼鏡の年配女性が、忘れてないわよ。もうちょっと待っててね、と悪びれず言う。
あ!アボリジナルタイムか? 琉球タイムやインドタイムみたいなもんがあると聞いた気がする。9時5時の世界かと思ったら、アボリジナルタイムもありだったのか。かくして、ベロニカさんが出て来たのは40分ぐらい経ってから。
「ごっめ〜ん!!」と現れたベロニカさん。めちゃキュート!
「ぜんぜんかまいませーん!!」と三人の緊張が一気に溶けた。
「外で地べたにすわってもらってもかまわないかな?」
「おー、ナイスアイデアじゃない!いいよ!オッケー!」
ベロニカさん、めちゃフランク〜。常に明るい笑顔が、僕らの肩の力を抜いてくれる。
監督と、えーちゃんが、打ち合わせに沿って質問を始める。たまに予定にない質問も挟まるが、えーちゃんが一生懸命伝える。ベロニカさんも一生懸命聞いて、流暢に自分の意見を語っているようだ。僕は半分以上内容はわからなかったけど、三人のムードがとてもよい。穏やかな素晴らしいインタビューだったと思う。
ベロニカさんは、ダーウィン生まれで、生粋のアボリジナル集落で育ったわけではない。しかし、アボリジナルの伝統もよくよく理解し、その良い部分を絶やさない意思が感じられる堂々ぶりもあった。ウランの件も、先祖からあの山には近づくなという言い伝えがあったこと、動物に変調があったので、近づかなかった。ウランが掘り出されなければ福島事故の影響もなかったと思うと気になる、と言ったように思う。もっと英語が達者な人に見てもらわないといけないが、たぶん間違いないと思う。
インタビューの冒頭で、監督が、太平洋戦争でダーウィンを空爆したことを日本人として詫びた。ベロニカさんは若い。そのことを忘れずにいてくれればそれでいいのよ・・・、というような表情で「気にしないで」と言ってくれた気がする。過去の教訓を未来に活かすライトなムードに希望を感じた。過去の過ちは水に流すことはできないかも知れないが、溶かしていく歩み寄りは必要だ。
福島の子ども達にメッセージをもらった。短い言葉でまとめられていた。どんなニュアンスか、翻訳の専門家から早く教わりたい。子どもたちの未来を勇気付けてくれたらいいなぁ。
和やかにインタビューが終わったあと、監督が、日本ではハッピーでウキウキな気持ちを表現するときに使う言葉として「ワクワク!」と言うのだ、と身振り付きで教えた。身振りは、お笑い芸人ゆってぃの「ちっちゃいことは気にすんな、それ、ワカチコ、ワカチコ」のパクリである。逆? 両腕の脇を開け閉めしながら「ワクワク!」と言うと、なんだかそんな気分になってくる。ベロニカさんが監督に続いて「ワクワク!ワクワク!」と繰り返す。可愛い!!みんなが笑う。ひょっとして、この言葉、アボリジナルで流行るのかも。
たった一時間のことだったけれど、終わったあと事務所に挨拶に行くと、ディビッドもダニーもヘミングウェイもみんな、よかったな!的なことを言ってくれる。ヘミングウェイさんなんか特に自分のことのように満顔の笑顔で会釈してくれた。
ベロニカさんインタビュー、よくぞ実行できたものだ。数々の皆さんに、感謝感激雨霰。
人の心はこうして繋がっていくのだなぁ。
響きは映画制作なんだけれども、プロセスに意味があるのかもしれない。