42の民族がいる。
ここでは、 マサイ族、キクユ族、ルオ族、サンブル族、トゥルカナ族を、ご紹介。
【マサイ族】
マーサイ族は、ケニア南部からタンザニア北部一帯の先住民族である。
人口は推定20 - 30万人程度と推測されている。一般的には長音符を付けない「マサイ族」と言われる事が多い。
*言語:マサイ語。
*名称:「マーサイ」とは「マー語を話す人」という意味。
*宗教:キリスト教・アフリカの伝統宗教。
「伝統信仰」は、キリマンジャロ山の頂上に座するエンカイという神を信奉する一神教。これはキクユ族の神であるンガイと同じものである。
*関連する民族:サンブル族、トゥルカナ族、カレンジン族他。
有名なものに、マサイ・ジャンプ。マサイは誰よりも高く跳ぶ者に敬意を払う。
*歴史
近代・現代に入ってから、古くはヨーロッパの植民地主義者(ドイツ及びイギリス)や、イギリスに原住地を追われたキクユ族などによって、マーサイ族の土地が強制的に収奪され続けてきた。
マーサイ族が、遊牧を行なっていた土地の多くは動物保護区や国立公園などに指定され、法的に彼らが遊牧を行なうことができなくなってしまった。
(アンボセリ・ナイロビ・マーサイマラ・サンブル・ナクル・マニャラ・セレンゲティ・ツァボなどの地域)
現在、ケニア・タンザニアの両政府が進めるマーサイ族の定住化政策に対して、遊牧民である彼らは一貫して抵抗を続けており、両国内にある国立公園内での遊牧権と、季節ごとに家畜の移動を行なう際に両国の国境を超えて自由に移動する権利を要求し続けている。
だが、現実的には両国政府の定住化政策は進んでおり、彼らの中でも農耕や、現金収入を得られるサバンナ観光ガイド、密猟監視員などの職業に付く者が少しずつ増え、遊牧生活を続けてゆくことは年々難しくなってきている。
*生活・文化・習慣
本来は定住せず、伝統的な牛・羊・ヤギ等の家畜の遊牧で生計を立てる遊牧民である。
マサイ族伝統の住居は、牛糞と泥をこねて作った掘ったて小屋(マー語: enkaji)である。
この掘っ立て小屋をサークル状に配置し、外側をさらに木の柵で囲うのが村の伝統的なスタイルである。
この村全体を、彼らはエンカン(マー語: enkang)と呼ぶ。
夜になると、彼らは放牧していた家畜をこのサークルの内側に入れるが、これは猛獣などの外敵から家畜を守るための知恵である。
牛はマサイ族にとって最も重要な財産で、通貨としても機能し、賠償・結納・相続などは牛の受け渡しによって行われる。
一夫多妻制で、牛(財産)を多く持つ男は何人も妻をめとることができるが、牛を持っていない男は女性に相手にされず、結婚も恋愛も難しい。
「地上のすべての牛は神から与えられた」という神話があるという。
またマサイ族の文化では、成人男性は猛獣退治や牛の放牧以外の労働をせず、普通の仕事は全て女性や子供が行う。
これは戦いのみが男性の仕事で、武器以外の道具を持ち運ぶことすら恥とする彼らの価値観による。
外部の人間が仕事を与えても「自分たちの文化ではない」として受け入れないことが多い。
伝統的な主食は牛乳と牛の生血。
近年ではウガリ・チャパティ・米飯などの炭水化物も日常食となっている。
牛乳をギブユという瓢箪に入れて作った原始的なヨーグルトや、牛の血を抜いてそれを牛乳と混ぜ合わせた飲み物もある。
また牛の血そのものも飲用する。客人が来たときのお祝い事などでは動物を殺して肉食をすることもあるが、家畜を潰してしまうことになるためごくまれである。
魚食は全くせず、野菜を食べることもごく少ない。
政治的には、それぞれの村ごとに長老がいて物事を決定する原始的な長老制をとる。
戦士階級であるモランはこの長老の下に属し、未だ修行中の身分とされる。
マサイ族の男性は、生涯に必ず一度はモランとなる。
モランは槍で武装し、独自の槍術をよくする。
このほか相撲に似た格闘技も存在し、彼らはこれらを駆使してライオン、豹をはじめとする猛獣とも渡り合う。
ケニアでは猛獣狩りは、野生生物保護のために法的に禁じられたが、現在も廃れていないらしい。
マサイ族の伝統的な色は赤であり、衣服や化粧にはほとんど赤が使われる。
本来靴は履かず裸足であったが、最近では自動車の古タイヤを切り抜いて鼻緒をつけた、自製のサンダルを履くようになった。
最近では、伝統的な赤の衣服などを着るマサイ族の事を『ビレッジマーサイ』、それ以外の色の服を着て街中を普通に歩くマサイ族の事を『シティマーサイ』と区別して呼ばれる。
*伝統的儀式
大人に成った証としてマサイ族伝統のルング棒という武器を持ってライオンと戦う伝統儀式があった。現在ではほぼなされていない。
このルング棒は「勇者の棒」とも呼ばれ普段からこの武器で狩猟していた。
固く丈夫なエポニーという木を材料としているため、とても軽くて丈夫な協力な武器となったのだそうだ。
*身体的特長
驚異的な視力を持つことはよく知られている。
通常の方法では計測不能であるが、彼らの視力は3.0〜8.0程度と推測されており、優れた暗視能力も併せ持つ。
彼らはこの視力のため、サバンナでも道に迷うことはない。
彼らの驚異的な視力は生まれつきのものと思われがちだが、これはサバンナで家畜を猛獣などの危険から守るために常時眺視(遠くを見つめること)を強いられる生活を送っているため、視力が自然に鍛えられていることが主な要因である。
都会に長く住んでいるマサイ族が、平均1.0〜1.2程度の視力しかないことから考えても、遺伝的な要因は薄い。
【キクユ族】
キクユ族は、アフリカ東部、現在のケニアを中心とした地域に住むケニア最大の部族。
主な居住地は、首都ナイロビから北西方面に当たるケニア中央部に住むパントゥー語群系農耕民で、キクユ語 (Kikuyu, Gîkûyû) を話す。
ケニア人口の22%に当たる534万(1994年)の人口とされる。
主に高地で農業を営む。
神が棲む神聖な場所としてケニア山を崇拝する。
歴史的には「伝統信仰」を信じてきたが、現在はほとんどがキリスト教に改宗している。
キクユ族の伝統信仰は、ケニア山の頂上に座する神・ンガイ(スワヒリ語: Ngai)を奉ずる一神教である。
ンガイは、マサイ族からはエンカイ(スワヒリ語: Enkai)と呼ばれているが、同じ神を指している。
元は狩猟採集民であったと考えられているが、ケニア山南西麓を中心として広い地域に住んでおり、牧畜民マサイ族や狩猟民ヌドロボ族の文化をかなり吸収してきた。
植民地支配に大きな影響を受けた部族であり、その生活は20世紀に入り急激に変化した。
有名なマウマウの反乱により投獄され、独立後に大統領となったケニヤッタはこの部族に属する。
2002年以降の第3代ケニア大統領ムワイ・キバキもキクユ族の出身者である。以来キクユは政治的にケニアを支配してきたが、現大統領モイは少数部族カレンジンであり、両部族の間に溝ができている。
キクユ族は、原始的な氏族集団で生活を営んでおり、儀式の際、独特の化粧と民族衣装を身に纏う。
計画性と先見性に優れてた部族と言われている。
確かではないが民族学者は他のバントゥー系の民族と共に西アフリカから現在のタンザニアを抜けキリマンジャロを東に移動しケニア山の周りに移住し、残りは南部アフリカに移住したと信じている。
エンブ (Embu)、メル (Meru) などの隣接民族と言語・文化的に近い。
早くから白人入植者に土地を奪われ、労働に徴用された。
また、ミッション系の学校で教育を受けた多くの若者がナイロビで働いた。
ビジネスセンスが長けており、多くの政治家や社長を輩出し今のケニアを引っ張っている民族でもある。
【ルオ族】
ケニアを中心に、南スーダンからタンザニアにかけて居住するナイル語系諸族の一民族。
ケニア西部にある都市でニャンザ州の州都及びキスム県の県庁所在地であるキスムが主要な定住地として知られる。
キスムは人口は約41万人(2009年)でケニア3位であり、ケニア西部の中心都市である。
ビクトリア湖北東部のカビロンド湾の湾奥部、標高1170mにある港湾都市であり、大ビクトリア湖盆地の中ではカンパラについで重要な都市である。
人口は350万人を超えると推定されている。
言語はナイル諸語に属するルオ語を話す。
漁業、牧畜、農耕を行うが、現在ではかつての牧畜に代わって農耕が最も重要な産業となっている。
ウガリ(メイズの粉をお湯で練ったそばがき状の食べ物)を作らせれば一番といわれる。
ケニア国内では、ケニア建国以来、主導権を握っているキユク族への反感が強い。
ルオ族の伝統音楽は、Ohangla(オハングラ)と呼ばれ、太鼓などの打楽器をメインにしたリズム音楽。
伝統的には男子に限られている。
ベンガとして知られる独自の音楽のスタイルを持つ。
バラク・オバマ 元アメリカ合衆国大統領の父親は、ケニア西部コゲロ村で生まれ育ったルオ族出身。
【サンブル族】
人口約7万、丘陵サバンナ地帯を生活圏としたロート系部族。
農耕は行わずに牛・山羊・羊の放牧を行う。
彼らの外見、生活、伝統はマサイ族に酷似している。
サンブル地区の半砂漠地帯に住んでおり、年齢別集団組織が存在。
牛、羊、ヤギを飼い、主食である乳製品を得る。
毛布をまとい、赤っぽい黄土で身体を飾る。
老人にはわがままを言うものを呪う神秘の力があると信じられており、それが秩序を保つ大きな力となっている。
【トゥルカナ族】
トゥルカナ湖・エルモロ族の近くに住む放牧民。人口約16万人。
牛、山羊、羊、ロバ、ラクダを飼育し、その肉やミルク、血を食用として生活する。
生活地域の大部分は乾燥した半砂漠であり、農産物の占める割合は僅かだ。
周囲に住む他部族を全て敵とみなす傾向があり、家畜の争奪をめぐる争いが絶えない。一旦戦いが始まると何も恐れないといわれる勇敢な戦士だ。 |